農業経営診断の進め方

マネジメントサイクル

農業経営とは、ある目的を持って、農畜産物の生産・飼養・販売などの事業を継続的に行うことです。ある作物をこの量だけ生産・販売すると言う目標を設定した場合、その目標を達成できるように実行計画を立てます。立案した計画に従って、実際に必要なだけの農業資材を購入したり、一定面積の圃場に作物を作付したりします。最終的には、生産物を販売し、損益計算書や貸借対照表などによって、経営の利益や財政状態を把握します。そして、経営成果を診断し、必要に応じて改善を加えて、次の計画を立てるのです。

このように、農業経営は、設計 (計画) – 実行 (運営) – 診断 (反省、評価) の繰り返しで進められるのです。この繰り返しをマネジメントサイクルといいます。農業に限らず、マネジメントサイクルは様々な事業において広く活用されています。マネジメントサイクルは1度で終わりではありません。経営が続く限り、何度も繰り返されることが経営改善にとって重要です。

経営診断の手順

それではもう少し詳しく、経営診断の手順を見ていきましょう。

農業者は、経営の実態を正しくつかみ、それを分析・評価して経営診断を進めなければいけません。経営診断は、普通、収益性の診断から始めます。というのも、経営活動の成果は、最終的には、全て収益として現れますので、収益は、経営の総合的な力を表したものとみなすことができるからです。そのため、収益性の診断は、経営の総合診断と呼ばれます。

次に、経営活動全体を生産・販売・購買など各部分に分けて、それぞれについて診断する部分診断を行います。これによって、収益性の良し悪しの原因がどこにあるかを、具体的に突き止めることができるのです。部分診断に基づいて、問題点を発見・整理し、改善設計を立てていきます。

例として、例年よりも収益が少なかった場合、どのようにすれば原因と結果の筋道立った診断手順になるのか、みていきましょう。

農業収益の現状と大まかな理由

まず最初に、農業粗収益についてチェックします。所得が少なかったのは、粗収益が少なかったためか、それとも農業経営費が大きかったためか、どちらかに理由があると考えられるからです。

もし粗収益が少なくなっているとすれば、その原因を探ることとし、反対に粗収益が多いならば、農業経営日が大きかった原因をさらに探っていくことになりますね。

農業粗収益の少なさの原因

農業粗収益が少なくなった原因には、単位あたりの生産額、単位あたりの生産量(単収)、生産物の販売単価、経営規模、のいずれかに問題があると考えられます。それらの原因を順に見ていけばいいのです。

もし、単位あたりの生産額 (単収 × 販売単価) が多いならば、規模が小さいことが問題であるとわかります。そのため、規模拡大が改善の方策になるのです。そうではなく、単位あたりの生産額が少ないならば、単収が少ないかどうかをチェックします。単収が低いならば、生産方法の改善が解決の方向性です。

単収に問題がないならば、販売単価をチェックしましょう。もし、単価が低いならば、生産物の品質向上や販売方法の工夫によって高い販売単価の実現に取り組むことになります。単価が高いならば、経営組織の変更を考えていくことになります。

農業経営費がかかりすぎている原因

物財費 (肥料、農薬、飼料など)、機械などの減価償却費、通信費、研修費、販売費、支払地代、支払利子、雇人費といった、すべての農業経営について、費用がかかりすぎている原因がどこにあるかを調べます。

その際、費用を固定費と変動費に分け、面積など単位あたりの数値で示しておくと、原因をチェックしやすくなります。

もし、減価償却費などの固定費が高い場合には、その有効利用を図り、固定費の削減に努めましょう。固定費が少ない場合は、変動費を調べます。生産資材費などの変動費は、投入量と購入単価をかけたものなので、どちらに問題があるかを調べます。もし投入量が少なければ、高い価格で仕入れていることが問題なので、調達方法を見直すことになります。投入量が多ければ、節約を考えましょう。

以上からわかるように、経営成果には、経営規模、生産技術、販売・購買に関わる手腕 (経営技術)、生産物や資材の市場価格が関係しています。それらをチェックすることが、経営診断の要点です。経営規模と経営技術は、経営者や従業員の努力によって管理できるので、内部要因と言うことができます。これに対して、生産物の市場価格は、経営の成果に影響与える外部要因です。

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