農業経営診断の手法と指標

農業経営とは、ある目的をもって農畜産物の生産・飼養・販売などの事業を継続的に行うことです。こうした農業経営の状態を把握するのが、農業経営診断です。この記事では、農業経営診断の手法と指標を解説します。

経営診断の手法

経営実態の分析・評価は、様々な診断手法を用いて行われます。診断手法は大きく分けて 2 つあります。

1 つは実数法です。実績数値をそのまま用いる方法で、例えば、利益の大きさ、売上・生産量といった、経営の量を把握できます。

もう一つは比率法です。ある項目の実績数値と、他の項目の実績数値との相対的な比率を求める方法です。例えば、経営の効率性や利益率といった、経営の質を把握するのに適しています。

さらに、それぞれの診断・指標を、何かと比較分析することで、様々な経営診断ができます。

自分の過去と比べる

自分の農業経営における、今年度の成績と過去の実績と比較分析します。これを年時間比較といいます。過去数年間のデータがあれば、基本的な経営の推移と問題点が分かります。

他の経営と比べる

地域全体の農業経営を、経営組織別や経営成果物、または、規模別などにグループ分けし、それぞれのグループごとに算出された各指標の平均値とを比較分析します。これを経営感覚といいます。自分の経営の位置づけが分かりますね。ただし、他の経営の数字はなかなか手に入りにくいと言う観点があります。

お手本と比べる

農業経営に関する理論値や試験研究成績などを参考にして、代表的なモデル経営を想定し、その基準値を用いて、比較分析する診断で、基準値比較と言います。望ましい水準に向けた経営改善や設計の手がかりを考えることができます。ただし、理論と現実が一致しないことがあったり、基準として自分の条件に近いものを利用しなければならなかったりといった注意点があります。

経営成果をはかる指標

経営成果に関する指標は、経営の力を総合的に示したものです。家族経営では農業所得や家族労働報酬額などの指標を用います。

農業所得は自分が提供した労働だけではなく、土地・資本を合わせた三要素に対する報酬であり、混合所得です。家族労働報酬は、家族労働の成果を表す指標です。これらの指標を次のような式で求め、経営の収益性を判断します。

  • 農業所得率(%) = 農業所得 / 農業所収益 × 100

経営規模をはかる指標

経営規模は、普通、経営耕地面積や飼育頭・羽数を用いてはかります。ただし、経営組織が異なる経営の規模を比べる場合には、共通の基準となる農産物販売額、総投下資本や従業員数、あるいは、そう生産労働単位などを指標として用います。

経営集約度をはかる指標

一定の経営耕地面積に、どれくらいの労働や資本が投下されているかを示す指標が、集約度です。これは普通 10 a あたりで表されます。

  • 集約度 = (労働費 + 物財費 + 経営資本利子) / 経営耕地面積 × 10

生産性をはかる指標

経営に投入された生産要素が、生産に対してどれくらい経済的に効率よく働いたかを見るには、生産性指標が適しています。労働の効率は労働生産性、土地の効率は土地生産性、資本の効率は資本生産性です。これらの生産性は、次のような指標で表されます。

  • 労働生産性 = 農業純生産性 (付加価値) / 農業投下労働時間または労働従事者数
  • 土地生産性 = 農業純生産 / 経営耕地面積 (a) × 10
  • 資本生産性 = 農業純生産 / 投下資本額

生産技術をはかる指標

生産性 (生産効率) は、生産技術に左右されます。生産技術を見る指標には、次のようなものがあります。

  • 10 a あたりの収量 = 総収量 / 作付面積 (a) × 10
  • 1 人あたりの作付面積 = 作付面積 (飼育頭・羽数) / 労働従事者数

このほか、複合経営全体としての生産効率を見る場合には、共通の指標として、作物収量指数が用いられることがあります。

販売購買手腕をはかる指標

販売購買の手腕は、市場での平均単価と自己の経営で実現された単価などと比べることによって判断できます。

財政状態をはかる市場

資産内容の構成、資産の調達資金の構成から見て、借入金の返済能力 (支払能力) や経営の安全性が、どのような状況にあるかを判断するのが、経営の財政状態をはかるということです。

資産は、大きくは固定資産と流動資産に分けられます。固定資産よりも流動資産が多い方が現金化しやすいため、返済の面では望ましいと考えられます。この望ましい状態性にあることを、流動性が高いといいます。資産の流動性が高いと、借入金の返済能力が高いことを意味します。

また、返済の必要な負債が少ない方が経営にとっては望ましいですよね。負債の中では、1年以内に返済しなければならない流動負債より、1年以上先に返済すれば良い固定負債の多い方が、経営にとっての安全性が大きいといえます。こうした、財政状態をはかる指標には、流動比率・自己資本比率などがあります。

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