農業簿記における棚卸資産

農業経営

(株)こうち新みさと園芸は、高知県高知市三里地区にある園芸出荷場です。高知特産花卉のグロリオサと、ミョウガを取り扱っています。

グロリオサは web ショップでも取り扱っていますので、ご覧ください。

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今回は、農業簿記における流動資産、特に棚卸資産の扱いについて紹介します。

棚卸資産とは

棚卸資産には、商品、製品(もしくは農産物)、仕掛品、原材料などがあります。農業において主に取り扱う棚卸資産は次の通りです。

所得税青色申告決算書における取扱い

所得税青色申告決算書では、棚卸資産について独自の勘定科目名を使っています。この勘定科目名は、会計における勘定科目名とは異なっています。比較すると、次のようになります。

製品 (または、農産物)

農産物で年度末に未販売で在庫となっているものは棚卸資産として評価します。この場合の農産物とは、次のものをいいます。
(イ)米、麦その他の穀物
(ロ)馬れいしょ、甘しょ(さつまいも)、タバコ、野菜、花、種苗その他の圃場作物
(ハ)果汁、10円の生産物
(ニ)温室その他の特殊施設を用いて生産する園芸作物

所得税青色申告決算書における取扱い

所得税青色申告決算書においては、会計における「製品」に該当するものとして、「農産物等」という勘定科目を使用します。

棚卸しをする場合は、棚卸資産の種類、品質、型などの異なるごとに、数量、単価、金額を記載するのが原則です。ただし、下記のような簡便法でもよいとされています。

農産物の棚卸(簡便法)

次の取引の仕訳を行いましょう。

12/31 山田農場では水稲作をしているが、年度末に米の在庫を調べたところ 60 俵あった。なお、米の 1 俵当たり販売価格は 13,000円 である。

12/31 山田農場の前年末の米在庫の金額は 567,000 円であった。

仕掛品

年度末において圃場やハウスで栽培中の未収穫農産物や、年度末において販売目的のために肥育中の販売用動物などは、次年度以降に販売されます。

これらの作物・家畜の栽培・肥育にかかる費用が発生した時点において、種苗費、肥料費、素畜費、飼料費、農薬費などに計上されていますが、これらの費用は、発生時ではなく販売時の費用とするルールになります。

そこで、未収穫農産物や販売用動物の栽培・肥育に要した費用は、当年度の費用から除外し、仕掛品勘定 (資産) を通して次年度へ繰り越します。

年度末の処理

種苗費・肥料費・農薬費などの各科目について、栽培中・肥育中の農産物などの生育にかかった金額を把握し、その合計額を費用から減額し、資産に計上します。費用から減額する勘定科目は「期末仕掛品棚卸高」、資産に計上する勘定科目は「仕掛品」です。

次の取引の仕訳を行いましょう

山田農場は、秋撒き小麦を作付けしています。この収穫は来年の春です。当年において小麦作付けに種苗費 65,000 円、肥料費 112,500 円、農薬費 82,200 円、合計 259,700 円がかかり、という気の費用に計上しています。

次年度における取扱い

仕掛品勘定を通じて次年度へ繰り返された金額は、次年度において「仕掛品」を減額し、改めて費用に計上します。費用に計上する勘定は「期首仕掛品棚卸高」です。

次の取引の仕訳を行いましょう

山田農場で、当年度収穫した秋播き小麦について前年度から繰り返された仕掛品の残高は 259,700 円だった。

所得税青色申告決算書における取り扱い

所得税青色申告決算書においては、会計における「仕掛品」に該当するものとして、「未s収穫農産物等」という勘定科目を使用します。

原材料

肥料、農薬、飼料、農業資材などの購入費用は、購入した時点において費用に計上されています。

しかし、年度末において肥料、農薬、飼料などが未使用で残っている場合は、棚卸をして原材料勘定を用いて当年度の費用から除外し、次年度へ繰り越します。

年度末の処理

費用に計上されている肥料、農薬、飼料などについて、年度末において未使用で残っている金額を把握し、その合計額を費用から減額し資産に計上します。費用から減額する勘定科目は「期末材料棚卸高」、資産に計上する勘定科目は「原材料」です。

次年度における取扱い

原材料勘定を通じて次年度へ繰り越された金額は、次年度において、「原材料」を減額し、改めて費用に計上します。費用に計上する勘定科目は「期首材料棚卸高」です。

所得税青色申告決算書における取り扱い

所得税青色申告決算書においては、会計のおける「原材料」に該当するものとして、「肥料その他の貯蔵品」と言う勘定科目を使用します。

貯蔵品

軽油や梱包材などは、購入したときに費用に計上しています。

しかし、年度末においてこれらの軽油や包装資材などが未使用で残っている場合は、棚卸をして「貯蔵品」勘定を用いて当期の費用から除外します。

年度末の処理

諸材料費などに計上されている軽油や包装資材等などについて、年度末において未使用で残っている金額を把握し、その合計額を費用から減額し資産に計上します。費用から減額する勘定科目は「動力光熱費」「諸材料費」など費用計上時に使用した勘定科目です。資産に計上する勘定科目は「貯蔵品」です。

次年度における取扱い

貯蔵品勘定を通じて次年度へ繰り越された金額は、次年度において、「貯蔵品」を減額し、改めて費用に計上します。費用に計上する勘定科目は「動力光熱費」「諸材料費」など、資産計上する際に減額した勘定科目です。

所得税青色申告決算書における取扱い

所得税青色申告決算書においては、会計における「貯蔵品」に該当するものとして「肥料その他の貯蔵品」という勘定科目を使用します。

次の取引の仕訳を行いましょう

12/31 山田農場は、年度末に未使用の肥料 147,500 円、農薬 86,800 円、軽油 24,000 円が残った。

12/31 山田農場における年初の未使用肥料 79,160 円、農薬 37,800 円、軽油 36,200 円は、当年度において使用消費している。

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