農業経営と原価計算
経営の内部活動の記録・計算
農業経営が成立するにはどのような要素が考えられるでしょうか。たとえば資材を仕入れるなどの購買活動・生産活動、それから農産物の販売活動などがありますね。
このうち、購買活動と販売活動は外部の取引先とつながる活動なので、外部活動といいます。
生産活動は経営体内部で行われるので、内部活動といいます。
原価計算
内部活動である生産活動について原価計算を行い、それによって得られたデータをもとに簿記を行えば、農業経営にとって、より有用な資料を得ることができます。
原価計算とは、農産物を生産するためにかかった費用を計算する手続きです。
例えば、野菜の生産には、種苗や肥料などの材料が必要ですが、この材料費はいくらなのか、まだ野菜を作る人の労務費や、電力量などの経費はいくらかかったのか、そして最終的には全部でいくら費用がかかったのかなどを計算します。
原価の意味
生産原価
原価という言葉には、意味が2つあります。
- 生産原価・・・農産物を生産するためにかかった費用
- 総原価・・・生産原価に、販売費、一般管理費を加えたもの
原価計算で原価と言う場合は、普通は生産原価を意味します。
生産原価と総原価の計算例
農産物 A を生産するためにかかった費用
- 材料費 ¥120,000 労務費 ¥60,000 経費 ¥50,000
農産物 A を生産するためにかかった販売費と一般管理費
- 販売費 ¥19,000 一般管理費 ¥5,000
生産原価 = 材料費 + 労務費 + 経費 = ¥230,000
総原価 = 生産原価 + 販売費 + 一般管理費 = 254,000
非原価項目
生産原価に含まれるのは、農産物の生産に要した費用であり、総原価には、さらに農産物の販売や農業経営全般の管理のために要した費用も含めます。したがって、農産物の生産や販売、農業経営全般の管理に関係しない費用は、原価には含めません。このような費用のことを非原価項目といいます。
非原価項目にはどういったものがあるのかと言うと、例えば、支払い利息や台風など異常な原因による損失などです。
原価要素の分類
農産物の原価 (生産原価) は、いくつかの要素によって構成されています。この原価を構成する要素を原価要素といいます。原価要素は、様々な観点から次のように分類することができます。
発生形態による分類
原価要素は、その発生形態によって、材料費・労務費・経費に分類されます。この 3 つの要素のことを特に原価の三要素といいます。
- 材料費・・・農産物の生産のために材料を使った (消費した) とき、その商品を材料費といいます。材料費には、例えば、種苗費、肥料費、飼料費などがあります。
- 労務費・・・農産物の生産のために労働力を消費したとき、その消費高を労務費といいます。労務費には例えば雇人費などがあります。
- 経費・・・農産物を生産するためにかかった費用のうち、材料費、労務費以外の原価要素を経費といいます。経費には例えば、電力料、水道料、減価償却費、租税公課などがあります。
農産物との関連による分類
原価要素は、特定の農産物との関連によって、生産直接費と生産間接費に分類されます。
生産直接費
特定の農産物を生産するためにだけ消費され、その農産物の原価として直接集計することができる原価要素を生産直接費といいます。生産直接費はさらに、直接材料費、直接労務費、直接経費に分類されます。
生産直接費には例えば次のようなものがあります。
- 直接材料費
- 直接労務費
- 直接経費
なお、生産直接費を特定の農産物に集計する手続きを賦課といいます。
生産間接費
各種の農産物を生産するために共通に消費され、特定の農産物の原価として直接集計することができない原価要素を生産間接費といいます。生産間接費はさらに、間接材料費、間接労務費、間接経費に分類されます。
生産間接費には、例えば、複数の種類の農産物の生産に携わった個人の労務費などがあります。
生産間接費は生産直接費と異なり、各種の農作物について共通に発生するため、特定の農産物に直接集計することができません。そこで、ある一定の基準によって、生産間接費を各農産物に配分する手続きが必要になってきます。この配分する手続きを配賦といいます。
生産量との関係による分類
原価要素は、一定の規模のもとで生産量との関連によって、固定費、変動費、準固定費、準変動費に分類されます。
固定費
生産量の変動にかかわりなく、1 期間の発生総額が一定している原価要素のことです。例えば、減価償却費、保険料、賃借料、租税公課などです。
変動費
生産量の変動に伴って、その発生総額も比例的に増減する原価要素です。例えば、直接材料費等があります。
準固定費
ある範囲内の生産量の変動では固定しているが、その範囲を超えると急増し、再び一定の範囲内で固定化する限界要素です。例えば監督者の給料がありますね。
準変動費
生産量がゼロでも一定額が発生しその後生産量の増減に比例して変動する原価要素です。例えば電力量などです。
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